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「はぁ…はぁ…はぁ……」
港に抜けると、山吾は色とりどりに彩られたコンテナの森へ入る。
「はぁ……はぁ……」
深く深く入り込み、コンテナとコンテナの僅かな隙間に逃げ込んだ彼。
『奴はどこに行った!』
「!!」
『たしかここに逃げたはずですが……あ、奴の靴がありました!』
『なに?!……まさか、身投げしたんじゃ』
『有り得ますね。奴、相当追い込まれてたみたいですし、何よりメンタル弱そうでしたから』
『チッ……とりあえず、一回事務所に戻るぞ。死体は、明日にでも引き上げるしかねぇ』
『そうすね。どの道この暗さじゃもう無理です。あ、近くに車を呼んであるんで、行きましょう!』
段々と遠くなる借金取りたちの足音。
「……ふぅ」
身体の芯から沸き上がる安堵感に、山吾は深呼吸した。
今まで様々な人間から逃げてきた経験が、よもや自分の命を救うことになろうとは。
彼は、過去の自分に感謝した。
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