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と、唐突に腹の虫が一帯に鳴り響いた。
「……もう三日も何も食べてないや。それに、寒い」
極限に達した空腹と師走の夜の凍えるような寒さが、ついさっき命拾いしたばかりの彼を苦しめる。
「ん……!」
駄目もとでボロボロになったジャケットのポケットをまさぐると、潰れた腐りかけのオニギリが出てきた。
「はは……」
嬉しすぎて涙が溢れてきて、山吾は無我夢中でオニギリにかぶりついた。
「あぁ……おいしい……」
たった百五円(税込み)の鮭のオニギリが、まるでご馳走のように感じられた。
ゆえに食べ終わるのに時間は掛からず、掌に残ったのはしわだらけの包装ビニールだけ。
「……もう、寝よう」
そのビニールを枕にした彼は、ジャケットを顔の辺りまで引き上げ、静かに横になった。
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