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私には、二年前にできたお母さんと兄がいます。
「亜佐美、食事中は携帯電話を部屋に置いてきなさい」
「ごめんなさい、お兄ちゃん」
お兄ちゃんの拓也さんは、とても厳しい人だけど、妹思いの優しいお兄ちゃんです。
「そんなふうにキツイ言い方で言っちゃダメよ。ほんと、拓也は硬いんだから」
「いいの、お母さん。私が悪いの」
「俺は、義父さんの居ない間、この家のことを任されているんだ。妹の心配をして何が悪い」
お兄ちゃんは、会社の人から昭和の男と呼ばれているらしく、ちょっと頭が固いというか古いのです。
でも、それは意地悪ではなく私のためを思って言ってくれていることなので、全然悪い気はしません。
「……最近、やたらメールや電話が増えたんじゃないか?」
お兄ちゃんに指摘され、ドキッとしてしまいました。
なぜなら、最近、毎日、柴崎君からメールや電話がきていて、明らかに前とは違うからです。
「柴崎瞬というのは、どういう男なんだ? もしかして、あの事件と関わっているんじゃないのか?!」
あの事件とは……例の拉致事件のことです。
私は、柴崎君に助けてもらったんだけど、あれ以来、お兄ちゃんのチェックが益々厳しくなったような気がします。
でも、なんで柴崎君の名前を?
もしかして……携帯電話の中身、見た?
疑いの眼で見ていると、お兄ちゃんがコホンと咳き払いをしました。
「着信する時に、液晶に名前が表示されるだろう? 何回か見かけたので気になってな」
お兄ちゃんは潔癖で、メールや着信履歴を覗くような人じゃないので、本当にそうみたいです。
「柴崎君は……あの時、私を助けに来てくれた人」
「助けに?……確か、警察の話しだと仲間割れって言ってたぞ。まさか、そんな不良と付き合っているのか? それとも脅迫でもされているんじゃ?!」
「ち、違うってば。確かに、柴崎君と笹塚さんは仲良かったけど……」
「なら、そいつも一緒にお前をいじめていたメンバーじゃないか」
「ち、違う! それは違う!!」
私は思わず声を荒げてしまいました。
お兄ちゃんは、ちょっと驚いたような顔をしています。
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