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「いいんです、お母さん。私も、こんなに心配してもらって嬉しいし」
拓也さんは10歳年上の26歳。
有名な大学を卒業して一流企業に勤めているエリートサラリーマンだ。
柴崎君とは、ちょっと系統が違うけど、すごくカッコ良くて自慢のお兄ちゃんだ。
でも、歳が離れすぎて、私には新しいお父さんができた感じだった。
「……国領の家? 俺、本当に行っていいの?」
「うん。お兄ちゃんがどうしても会いたいって言ってて……」
「兄貴が?」
「うちのお兄ちゃん、ちょっと変わってるの。すっごく心配性で」
「なるほど。そりゃー、妹が付き合ってる彼氏なら気になるよな」
「う、うん……」
彼氏とか彼女っていうのは、本当はまだ慣れてなくって歯がゆい。
男女交際に疎い私は、未だに友達の彼女の線引きがどこからなのか分かっていなかった。
でも、柴崎君は私の中で特別だ。
彼には、色々なものを貰った。
笑顔。
私には勿体無いくらいの褒め言葉。
守られているという実感。
彼は、私には縁がないと思っていたものを与えてくれた。
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