番外編 その1 亜佐美の憂鬱

4/10
1126人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
「いいんです、お母さん。私も、こんなに心配してもらって嬉しいし」 拓也さんは10歳年上の26歳。 有名な大学を卒業して一流企業に勤めているエリートサラリーマンだ。 柴崎君とは、ちょっと系統が違うけど、すごくカッコ良くて自慢のお兄ちゃんだ。 でも、歳が離れすぎて、私には新しいお父さんができた感じだった。 「……国領の家? 俺、本当に行っていいの?」 「うん。お兄ちゃんがどうしても会いたいって言ってて……」 「兄貴が?」 「うちのお兄ちゃん、ちょっと変わってるの。すっごく心配性で」 「なるほど。そりゃー、妹が付き合ってる彼氏なら気になるよな」 「う、うん……」 彼氏とか彼女っていうのは、本当はまだ慣れてなくって歯がゆい。 男女交際に疎い私は、未だに友達の彼女の線引きがどこからなのか分かっていなかった。 でも、柴崎君は私の中で特別だ。 彼には、色々なものを貰った。 笑顔。 私には勿体無いくらいの褒め言葉。 守られているという実感。 彼は、私には縁がないと思っていたものを与えてくれた。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!