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「……ったく」
ふて腐れた表情で外の景色を見る
移り変わる町並みの中で
(見覚えがあるようでない場所だな)
なんてことを考えていた。
「ははっ、すみませんお嬢様が……」
運転席側から声が通ってきた
呆気にとられた羽霧星空、もとい空を尻目につづける
「私は風といいます。先程は失礼しました」
風(フォン)と名乗った男はミラー越しに頭を丁寧に下げた
「あ、お前は! よくも俺の腹をおもいっきり……!」
忘れるはずもない名前
末端とはいえ仮にも“羽霧家”の空を一撃で気絶させるほどの実力者。
「お嬢様の命令を背くことはできません故……」
苦い表情をつくり、どうやら嘘ではないということをしめす
この空にとっては嫌な思いがある相手を敢えて送らせる。ここにも彼女の嫌がらせが見え隠れしていた。
ふに落ちない点がいくつもあった空だが
「まぁいいや。ところでさ、やっぱあいつって名門のお嬢様なのか?」
「麒麟塚。表御三家といわれるほどの経済界のトップの一つ、香琳様はその御令嬢でございます」
表御三家。少なからず空はその言葉を聞いたことがあった
というより、聞かない方がおかしいくらいだ。
(なるほど。あの言動は家柄ならではっつうことかよ)
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