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田や畑が多い道に差し掛かった
空にとっては見馴れた景色だ。
「あ、もうこの辺でいいぞ」
「……? 差し支えなければご自宅の前までお送りしますが」
風の気の利いた言葉には空にとっても有り難いことなのだが、そうもいかない。
「いや…いいんだ本当。俺は重要な事を忘れてた……、ちなみに今何時?」
「午後十時二十八分ですが……」
時計の針が進むにつれ、空の、心と胸と頭と身体が押し付けられていた
大量の脂汗が座席に染み渡る。
寒くもない季節に、体が拒絶反応を起こしたように震え出す
「ウチ、カエリタクナイ」
「……は、はぁ。やはりご自宅の前まで」
「ソ、ソレはダメだ!! 絶対!! 血の量が増える……」
そんなやり取りを続けた後に、空は覚悟を決めた表情へと変わっていた
「では本当によろしくて……?」
「よ、よろしい。うん。あんたのためにもこれがよろしい」
「……? では夜道はお気をつけて」
行った。
あれほど優しい人間があの暴虐なる小娘にこき使われていると考えると、空の胸に妙なイライラがつのる。
(そういや教えてもねぇのになんで俺ん家まで知ってたんだ……?)
それを考えると背筋がゾッとした。
っが、今はそれよりもゾッとすることがある
家に巣くう魔物へと赴かなければならない
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