その1

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「こんにちは」 「こんにちは」 俺は人形を1体ずつ手に持ち交互にお辞儀させる。 もちろん声色を変えて。 「今日も天気がいいですね」 「絶好の散歩日和ですね」 ……こんな会話があり得るのだろうか。 余りの才能のなさに鬱になる。 はぁ……どうしようか。 途方に暮れていると突然ドアが開き女性が部屋に入ってきた。 「目が覚めたんですね。よかった」 言いながらベッドのそばまで歩いてくる。 金髪に青い目。外国の方だろうか。 一見すると怖そうに見えてしまう端正な顔立ちと長いストレートの髪が印象的だな。 「ここは?」 「私の部屋です。家のそばに倒れていたので慌ててこちらに運んだんです」 「そうだったんですか。ご迷惑おかけしてすいません」 「いえいえ。困った時はお互い様ですから」 そういって笑顔を見せてくれるがあまり直視出来ない。 慣れてないんだよ。女性。
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