その1

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「あ、あの、日本語お上手ですね」 沈黙の訪れを嫌いそんな事を聞いてしまう。 ワザワザ日本で暮らしているのだから上手なのは当たり前だろ。俺のバカ。 しかし彼女の返答は俺が想定していたものとはかけ離れたものだった。 「ニホンゴ? ニホンゴとはなんですか?」 耳に入ってくる彼女の言葉は確実に日本語なのだが彼女には通じていないようだ。 「す、すいません。変な事聞いて」 反射的に謝ってしまう。 「いえいえ。大丈夫ですよ。ご飯食べれますか?」 すると俺のお腹から飯を要求する音がなってしまう。体は正直だが恥ずかしい。 「えと……是非」 「はい」 そう言って歩き出すが部屋を出る前にこちらを振り返る。 ん? なんだ? 「さっきの人形遊び、あとで私も混ぜて貰っていいですか?」 俺は慌てて両手の人形を枕の横に並べた。 それを見て小さく笑いながら今度こそ彼女は部屋の外に消えていった。
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