後輩くん、現る。

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「……」 偉そうにものを言い続けていた美少年は、急に押し黙る。 人違い、ってことに気付いたんだろう。 …なんか少し、勝った気分。 「…んじゃ、私はこれで」 少しの時間の関わりを終わらせようと、彼より先に歩いた。 …けど、三歩目を踏み出したところで、何故か前に進めない。 腕を掴まれている。 また、意味不明。理解不能。 「何?」 「…人違いは謝ります。 けど…人違い、ってかなり恥ずかしいですよね?」 「はあ?」 何が言いたいんだ。コイツは。 恥ずかしい? そりゃあもちろん。 「…恥ずかしいけど」 何でそこで答えてしまう。自分。 でも彼の立場に変わったら、相当恥ずかしいなあ…と同情をしてしまった。 あたしの返答に、彼は初めて笑った。 クシャッ、と目尻が緩み、 真ん丸な目は三日月型に変わる。 うん、告白してきた子の理由がやっと分かった気がする。 「ですよね?…だったら、さっきのことをホントのことにすればいいんですよね?」 またもや疑問系。 言ってる意味がよく分からなく、とりあえず「うん」と頷く。 「…惚れさすよ、先輩」 疑問系じゃないのなら、私は答えない。 名前も知らない目の前の美少年。 なのにあなたは、私を惚れさす? なら私は惚れない。 強気なその瞳で ―――ゲームスタート。
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