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もう少しで完全夢の中に行くところを、着信音が邪魔をする。
「人が寝てるってのに……」
ぶつくさ文句を言いつつも、結局は通話ボタンを押してしまう。
「もしもし…」
寝起きの声は、明らか不自然。
低く擦れて、男のような声をしている。
電話の相手は、「ぶはっ」と大きな声で笑った。
「……誰ですか?用がないなら切りますよ…」
『あ、待って。先輩、俺おれ』
俺?
俺なんて、この世にいっぱいいるよ。
『日下部です。覚えてます?』
「く、日下部!?」
覚えてるに決まってる。
今日で…いや、今まで一番濃い印象を与えたヤツだから。
『あはは、そんな様子じゃあ忘れてませんね』
「…何の用よ」
からかわれてることに気付き、声を一段と低くする。
何で私の電話番号まで知ってんのよ。
あげた覚えがないし。
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