57人が本棚に入れています
本棚に追加
『んー?先輩、俺が言ったこと忘れてないですか?』
んげ。コイツ、意外に根に持つタイプ?
「何のことだろー」
忘れてない。
ワザと、しなかっただけ。
『んじゃあ言ってあげます。
メールか電話して、って言いましたよね?俺。
記憶力のいい先輩のことだから、覚えてると思ったんだけどなあー』
痛いところを突いてくる。
悔しさを覚え、「くっ…」と思わず声を零してしまう。
「…こ、これからしようと思ってたの!」
『あれ?先輩、忘れてたんじゃなかったっけ?』
彼の愉快そうな声に、またもや悔しさを覚える。
コイツ…賢いな。
よく頭が回る男だ。
『…言い訳はなしです。 往生際が悪いですよ』
「…スミマセンでした」
何であたしが謝る?
しかも、年下相手に。
きっと、電話口のアイツはさぞかしいい気味だ、と笑ってるに違いない。
『じゃあ先輩、明日の昼休み、1-B来て下さい』
「何で私がっ」
『いいですよね、それくらい。
だって先輩は、悪いことしたから謝ってるんですよね?』
「……」
正論に押し黙ってしまう。
『じゃあ、お休みなさい。先輩』
切られた。だから私も切る。
今度こそ寝よう。
私は寝に就いた。
最初のコメントを投稿しよう!