噂とは、誠に奇なり

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俺の前…いや、下で睨みをきかせている少女。腰ぐらいまである長いストレートの黒髪、身体は小さく、俺の胸までしかない。しかし、睨む目は目力があった。そんな少女に飴を差し出した。 「飴…ちゃん…?」 小さい体から、はっきりと高い声で聞き返してきた少女。 その手をゆっくり動かして、振り上げる。 パァン! 「………」 おかしい。 右頬が痛い。ひりひりするぞ。 指で頬を触ると、若干熱を帯びていた。 「…わ、わかった。飴ちゃん二つにして」 パァァァン! 「………………」 変だな。 今度は左頬が痛い。ひりひりする。 ここで俺は理解した。 この少女に頬をはたかれていることに。 気づいたら後は簡単だ。常識的に、知り合いでも何でもない、特に悪い人でもない人に暴力をふるってはいけないと親御さんのかわりに教育しなければ。 「お嬢ちゃん、暴力はいけな」 パッパァァァン!! 「………………………………………」 もう、泣けてきた。
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