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暖かい光が窓の向こうから降り注ぐ。気温は27度。昼寝をするには最高の気温である。 今にも寝てしまいそうな自分と必死で闘いながら、それでも律架は目の前の敵を睨みつける。 机の上には山のようにサボり続けた分の代償が積まれてある。 「…あのさ」 自分の背後にいる少女へ問い掛けるが返事はない。そんな事はいつもの事と、言葉を続ける。 「やっぱりさ…俺がお前の宿題をやるのはおかしくないか?」 「なんか文句あるの?あんたが春休み中私を連れ回したんでしょ。自分はさっさと終わらせてさ」 少女は立ち上がり、律架の傍までよっていき机の上を覗き込む。 「どれぐらいで終わる?」 「もうすぐ終わるから向こうに行っててくれ」 律架によろしくと声をかけ少女は自分の座っていたベッドに戻る。 どさっと座り部屋を見渡す。 少年の部屋は自分のものとは違いとても味気ない。 マンガもパソコンもなく、あるのは古ぼけた洋書が並んである、これまた古い本棚と机と椅子。そして、今自分が座っているベッドだけだ。 「あんたの部屋っていつきても何もないわよね」 「………お前の部屋にものが有りすぎるんだ凛」 「そうかな?」 「あぁお前の部屋はものが有りすぎてその……困る」 自分ではそうでもないが、彼が言うならそうなのだろう。 それにしても何が困るのだろうか。 聞いてみたい気もするが、少年の「終わった」の声を聞いた時にはどうでも良くなっていた。 「お疲れさま。お茶でもいれようか」 何気ない一言だったが、無口なこの少年はじーっとこちらを見ている。 普通のことを言ったつもりだったが少年はそうは思っておらず――― 「凛でも人を気遣うことがあるんだな」 なんていう始末である。 どうやら、彼の中では凛は気を遣うこともできない女らしい。 本当なら目の前にいる少年を殴ってやりたいところだが、本気でそう思っている彼の考えを変える方向に決めた。 「失礼ね。私だって気を遣うことぐらいできるわよ。少なくともあんたよりわね」 中学からの友人の一言に怒り心頭な彼女を見てさすがの律架も――― 「それ本気で言ってるのか凛…」 全く反省していなかった。
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