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良縁のススメ
「もうコレでいいんじゃないか?」
コレと呼ばれ、私は思わず手を止めた。
顔を上げると、いくつもの目がこちらを向いている。
「そうだな、適当にコレで手を打っておこう」
話が見えずに当惑する私を無視して、その場に居並ぶ重鎮達は次々に賛同の意を示した。
紅茶を注ぐべく、ティーポットを傾けた姿勢のまま私は暫し固まってしまう。
「あの……、何か?」
セレイア王国会議場。
政治的な話し合いが行われるこの広間には、国王を始めとする国家の中枢を担う主だった面々達が顔を揃えている。
円卓を囲むようにして腰をかけている彼等のまわりを、侍女である私は茶器を手に渡り歩いていた。
そんなしがない給仕役の侍女である私を捕まえて、国王はこう言ったのだ。
「魔王の花嫁になってもらう」
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