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道の先には黒煉瓦街へ続く階段があった。
階段を下りるとそこはどうやらエントランスで6つのドアが僕の目の前にある。
どちらへ行こうか悩んでいると足枷のついた囚人が僕に向かって歩いてきた。
「ハローハロー、囚人さん。ご機嫌はいかが?」
「機嫌?まぁ…良いっちゃあ良い。しかし悪いっちゃあ悪いな。とどのつまり普通ってとこか?」
足枷を鳴らしながら右足で左足を掻く囚人は煉瓦の壁に凭れて考えるようなポーズでドアを見る。
「なぁ坊主、少しばかり聞きたいんだがよ」
「なぁに?」
「このドアのどいつが一番軍警に近い?」
「軍警?囚人さんって脱獄してきたんじゃないの?」
「ほぅ、脱獄してきたって分かるか?」
ボサボサの顔にボロボロの囚人服、それに足枷。
「分かるよ、そのまんまの格好だもの」
「だよなぁ」
「なんで脱獄してきたのにわざわざ軍警に行くの?」
「そりゃあ、なぁ?辛いんだよ、分かるか?」
「辛い?」
辺りはすっかり真っ暗闇で、小さなカンテラの光は辺りに埋もれそうだ。
壁を通り抜けてきたゴースト達が僕と囚人の間を、カンテラの間を通り過ぎていく。
「豚小屋の中から自由を夢見て脱獄したけど現実はどうだ、周りの奴らは囚人の俺を見て蔑むし、毎日飯を食う金もねぇし、ついでに寝床はスラムの餓鬼で溢れてるときた。」
囚人はウンザリした様子でため息をついた。
「こんなんだったらまだあの豚小屋の方がマシだ。三食飯付き風呂も完備。おまけに朝は起こしてくれるんだぜ?」
「でも…戻った所で暫くしたら刑期が終わって普通に出れたりするんじゃないの?」
「そしたらまた人を殺すさ、……さて坊主、答えてくれ。どいつが一番軍警に近い?」
囚人が顎で示すドアは6つ。
僕は3つ目、鉄格子のドアを指差した。
「たぶん、あのドアだよ。暫く行くと小心者のお巡りさんがたってるし、」
「おぉそうか、あんがとな」
囚人はヒラヒラと手を降ると足枷を鳴らしながら3つ目のドアへと歩いていった。
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