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赤煉瓦街25番地まで歩いてくると広場の真ん中には目の見えない道化師がいた。
「ハローハロー、ピエロさん。ご機嫌はいかが?」
「さぁ、どうだろう?」
道化師はニコニコ笑っている。
「君はどっちがいい?」
道化師は話しながら鳥籠から鳩を取り出した。そして上に投げて飛ばすつもりだったんだろうけど、残念。
鳩は既に死んでいて、羽の疎らな死体がベチャリと地面に落ちていく。
「さぁ、どうだろう?」
「君が決めてよ、僕は決めれない」
「どうして?」
「それが僕の仕事だからさ、自分の事はどうだっていい。君を、君たちを楽しませるんだ。最高のショーでね?」
今度はカラフルなボールを取り出してジャグリング。
けれど目の見えない道化師だ、次の瞬間ボールは色んな所へ弾んで道化師から逃げていく。
「あとは洒落た洒落でも言えればもっともっと最高なんだけれど、生憎それだけは苦手でね。」
「ピエロさんはきっと悲しいね」
「そうだねぇ、ずっと笑ってばかりいるから色んな顔を忘れてしまったし感情もなくしてしまった。大切な鳩が死んでも可笑しく思えてきちゃったしねぇ」
道化師はまだニコニコ笑っている。
「僕はもう行くよ、最高のショーをありがとう」
「こちらこそ、最高の時間をありがとう」
歩き出した僕に手を振る道化師、振り返るとニタニタ笑っていた。
いつまでも笑っていた。
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