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赤煉瓦街27番地の街灯の下では褐色のジプシーが肌を晒していた。
「ハローハロー、ジプシー。ご機嫌はいかが?」
「そんなことより、如何ですか?ご主人様。」
「変なの。僕はまだ子供だよ?」
「如何ですか?ご主人様。」
街灯がチカチカ瞬きながら灯ると、暗い所から布の擦れる音が聞こえてきた。
「風邪ひいちゃうよ?」
「如何ですか?ご主人様。」
機械のように同じ事しか繰り返さないジプシーは優しく微笑んでヒソヒソ声を小さくして僕に話しかけてくる。
「ご主人様、内緒の話です。直にこの辺りは汚らわしい場所になります。そうなる前にお帰りになられた方が宜しいかと、」
「なんでヒソヒソ話なの?普通に言ってくれればいいのに」
「言えません。あまり無駄話をするとお客様が来ないんです。」
「お客様?」
「はい、私たちのお客様です。」
暗い辺りから苦しそうな息遣いが聞こえてきた。
「随分難しそうなお仕事だね、」
「そうでもありませんよ。なんせ足を開いて待っているだけです、これほど楽な仕事もありません」
ジプシーは街灯に照らされた道の先を指差す。
「あちらへ抜ければ黒煉瓦です、どうか耳を塞いで走り抜けてください。」
それだけ言うとヒソヒソ内緒の話はもうお終い。
「如何ですか?ご主人様。」
また同じ事を繰り返し始めたジプシーにお辞儀をする。
「お仕事頑張ってね」
「如何ですか?ご主人様。」
ジプシーに言われた道をまっすぐに走り抜ける。ちゃんと耳を塞いで、だ。
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