始まりの挨殺

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 事の発端は一時間前。生徒達がなかなか列にならないおかげで、無駄な時間を取って始まった生徒総会でのこと。  司会進行を務める二年生が壇上に上がり、コホンと咳払いを一つついた後に、 「それでは、校長先生からのご挨拶を頂戴致します」  二年生と入れ替わる形で校長が壇上に。きりっとしたメガネをかけたバリバリのキャリアウーマンだ。見かけだけはな。  校長のお話というのは、生徒を精神的且つ肉体的に殺めてしまう、目には見えざる殺人兵器だ。  実際そんなことはなかったし、校長自身もかなり暑さでうだっていた。挨拶を早々と切り上げて降壇する。  一息つく間もなく生徒総会が始まる。もう一度司会の二年生が壇上に上がった。 「それでは、生徒会長お願いします」  ……いきなりな話だが、俺の在籍している南柏原学園はスポーツの名門校で、野球では毎年プロ選手を輩出し、サッカーでは去年の天皇杯で優勝したとか。  設備もかなりしっかりしていて、学園と言うだけあって教室には全館冷暖房完備。そこらの私立校の生徒が聞いたら羨ましがるような、な。  そして今年。俺は縁あってこの学園に合格した。私立校ながら偏差値は70オーバー、県内トップの公立高校の数段上のレベルを走っている。  もう入学から二カ月が過ぎた。そんなある日、一本のニュースが校内を飛び交い、それは瞬く間に全国を駆け巡った。 『南柏原学園、史上最高学歴生徒会長誕生か!?』 『史上例を見ない大ハプニング!!』  新聞の地域欄のみならず、あと少しで一面を飾りそうな見出しの大きさに、俺は飲んでいたコーヒーを吹き出しかけた。  かくしてこの南柏原学園に、天才二年生の生徒会長が誕生し、誰もがその手腕に期待した。  しかし。それは同時に、ある一つの騒ぎを起こした。違う意味での騒ぎを。  就任報道があってからのこと、誰も生徒会長を見ていない。それどころか、誰が生徒会長かすらわかっていない。  かくして、今日初顔見せだ。どんな顔なんだと期待したが、まさか口論を始めるとはな……。
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