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「ん……ぐぁ、暑い……」
俺はいつの間にか眠っていた。意識をなくしていたと言った方が近いかもしれない。
俺は内心、これも夢だったという夢オチを期待していた。目が覚めれば、ちゃんと生徒総会が始まっている……そんなことを。
しかし、所詮夢は夢でしかなかった。目の前では相も変わらず言い争いが続き、座る体勢を保てている強者はどこにも……
いや、いた。一人いた。俺の前で体を前後に揺らしながら体育座りをし、苦しそうに荒い息づかいをしている女の子。
俺は笹上賢一郎だ。そして、この強者もとい女の子は佐々木舞香。席が前後ということもあり、男子を差し置いた友達第一号となった。
今にも横にこてんと転んでしまいそうなのだが、俺も実際そうなので何と声をかければよいか。
佐々木さんの為にも、ここは一つ勇気を出して二人の口論に割って入るべきだ。
周りを見渡しても、使えそうな人材はいない。全員苦しそうにもがきながら何事か訳の分からないことをぶつぶつと呟いている。
よし。心の準備は出来てるな。怒りと暑さで煮え切らんばかりにふつふつと込み上げる何かを、今こそ……!!
「おい!!」
……館内が異様な静けさに包まれた。二人の女子と佐々木さん以外は全員ぶっ倒れているので、静かなのも頷けたが。
しかし、一方の二人はつかみかかろうと手を振りかざしていたところで動作を停止し、俺を穴が空かんばかりに見つめている。
すると、茶髪にツインテールの方の女の子が憮然とした表情で、
「何よ」
やけに静かに言った。気づけば、前に座っていた佐々木さんが驚愕の表情で俺を見つめている。
驚くのもわかる。佐々木さんにとっても俺にとっても、段々と同士が朽ち果てていく中、救世主となるべき男(つまり俺)が現れたのだから。
「いつまでそうやってケンカしてるつもりなんだ!! こっちはいい迷惑なんだよ!!」
「何よあんた!! 権利もないくせに発言は控えて……」
俺がすかさず発言権のプラカードを掲げると茶髪ツインテールの女の子は尻切れ蜻蛉みたいに縮こまった。
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