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空は美しく晴れ渡っていた。
イルス学園を中心とした広大な都市の中でも特に静かな中央公園は、建国記念日とあってかいつになく多い人混みで埋めつくされている。
その喧騒からそう遠くない場所に停められた高級車の前で、クリスとその母親、エリスは向かい合っていた。
「お母様……」
「ふふっ。クリスは心配性だな。
安心しろ。私を誰だと思っているんだ?」
心配そうに呟くクリスに、柔らかく微笑みかけるエリス。
「さて、そろそろ私が出る番だ。
すぐ終わるさ。少し話をするだけだからな」
クリスが頷いたのを見ると、エリスはクリスの頭を撫でてやってから、くるりと踵を返して人混みの真ん中にそびえるステージへ歩き出した。
モーゼが海を渡るかの如く人混みが割れていく。
そして、英雄のような足取りでステージに上がると、高らかに宣言した―――。
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