0-1.プロローグ

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 どくん、と。  体に力が流れ込む。主、戦神ヒュリネイアスの力が、僕に力をくれる。  僕が小さい頃に、村の守り手だった父さんが話をつけて契約をした、この力。神様は星の数いれど、主の力は他の神様とちょっと違う。  ああ、仇を討てる力が、十分に流れ込んできてるから、魂が、体が、震える!!  べちゃり。  ベルトに挟んでいた斧を振り上げる。当然、僕を吊り上げていた腕は切り落とされて、地面に落ちる。次は 「えっ?」  やつらが悲鳴をあげるより先に、僕を吊り上げていたやつの首をはねる。水を切るみたいに、スッと肉が裂けていく。  これが、主の力。ほとんどの神様は、人間に外へ働く力を与えるけれど、戦神は、人間の中へ働く力を与える。そう、こんな風に。  地面を左足で蹴り、もう一人のところまで、跳ぶ。強化された脚力は一っ跳びで屋根を登れるほどまでになる。  そして、こうだ!  右足を相手に対して垂直に合わせ、速度を保ちつつ、体重を、力を上手い具合に乗せる!  そのあとは、振る直前で右足を相手に対し平行になるように曲げ、そのまま! 斧を思いっきり頭に向かって薙ぐ!  「かっ!?」  そいつは思いっきり殴られたみたいに吹き飛ばされて、僕にかかった返り血がその結果を物語る。  そう、つまり、僕は人を殺したのだ。二人も。  ――世界が崩れた。          
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