1108人が本棚に入れています
本棚に追加
どれくらい時間が経っただろう。
涙が乾いて、頬のあたりがパリパリと、顔を動かす度に痛い。
不意に外から車のエンジン音が聞こえてきた。
窓の方を見ると、ハルナの車が家の前に止まっていた。
玄関の方でガタガタと音がする。
「あ、ユウヤ発見!なかなか帰ってこないから迎えにきたよ」
振り返ると薄緑のワンピースを来たハルナが立っていた。
「ほら、早く帰ろ?さっきね叔父さんからワインが届いたんだよ。オードブルも作ったしね」
俺の手を引きながら、この場に似合わない楽し気な口調で喋り続ける。
今はワインなんて気分じゃなかった。
それよりも問いかけたい。
どうして君はこの家で笑えるんだ…?
だけど言葉は喉の奥に飲み込まれた。
それと同時に俺の中で、何かが音を立てて崩れていくのが分かった。
最初のコメントを投稿しよう!