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マンションだというのに、鍵が四つも付いていたのだ。
鍵多くないか?と聞くと、ハルナは当然というふうに言った。
「だって女の一人暮らしだよ?危ないじゃん」
「そうなのか?」
「そうだよ!もう、ユウヤは分かってないなぁ…」
ハルナは呆れた、と肩をうとめて続ける。
「ここ、元々は二つしか鍵ついてなくて、後の二つは業者さんに付けてもらったんだから」
「俺の家は二つだぞ?」
「それは奥さんとユウヤ、二人暮らしだからでしょ。私は一人なの」
「ああ、そうか」
確かその後、ハルナに一人暮らしについて長々と語られたんだった。
ふとテレビ画面に目を戻す。
そして、俺は時が止まるのを感じた。
目を見開き、口からは声にならない嗚咽が漏れる。
手は冷や汗でぐしょぐしょに濡れていた。
テレビには大きく一人の顔写真が映され、その下に『死亡』と書かれている。
そこに映っていたのは、よく見慣れた顔だったのだ。
「ミサト…?」
このところ見ていない、別居中の妻の顔だった。
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