最終編

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久しぶりに我が家を見た。 庭は相変わらず綺麗に手入れされている。 花壇には、もう帰らない主を待つ草花。 小さな蕾をつけている花もあった。 確か・・・クロッカス?だった気がする。 別居する一ヶ月ほど前にミサトと二人で買いに行った花だ。 二月から四月頃に紫や、白の花を咲かせるらしい。 でも、もう咲くことはないだろう。 俺とハルナがこの家に引っ越してくるとしても、手入れをする人がいない。 二人とも会社勤めだし、ガーデニングに興味もないのだ。 俺は持っていた鍵でドアを開け、中に入った。 「ただいま・・・」 返事はない。 もちろん返ってくるはずもない。 脅えながら警察へ行ったものの、いくつか質問されただけで特に何もなかった。 ミサトの荷物を持って帰ってもいい、と有無を言わせぬ口調で言われたから、そそくさと貰ってきた。 だから、今俺の手には大きなダンボールが一つ、抱えられている。
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