最終編

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寒色系の布をセンス良く繋ぎ合わせた袋。 見覚えがあった。 袋の中には何か入っているようで、意外と重みがある。 「えっ…」 袋を開けて、中のものを確認すると同時に声が漏れ、時が止まるのを感じた。 入っていたのはお弁当箱だった。 俺がいつも会社で楽しみにしていた、あのお弁当箱だった。 急いで蓋を開ける。 そこには、いつも通り俺の好きな具材が並んでいる。 弁当を届けていたのはハルナじゃなくて、ミサト…? そういえば、俺は一度も届けに来た瞬間を見たことがない。 いつも会社の机の上に置いてあるのだ。 「うそ…だろ……」 俺は信じきれずに、小走りでキッチンへ向かった。 いくつか引き出しを開け、目的のものを探し当てる。 そして見つけたものを握りしめ、その場に座り込んだ。
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