最終編

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このメモ…これは、初めて会社に弁当が届いた時、メッセージが書いてあったメモだ。 手元から視線を上げて、壁の方を見た。 色鮮やかなカレンダーがかけてあり、いくつかの日に赤い丸がついている。 ただ今日の日付のところは、赤い丸の上に大きくバツ印が書かれていた。 丸を消そうとしたのか? 俺は這いずるようにカレンダーに近づく。 丸印がついている日に共通して思い当たることがあった。 俺の、休みの日… 俺は月によって休みの日が変わる仕事をしている。 だから土日でも出勤していたり、水曜日に休みだったり、と不規則だ。 だけど、俺が出勤した日には必ず弁当が届いていた。 恐らく会社か、同僚に聞いたんだろう。 そして忘れないようにカレンダーに赤丸までつけていた。 今日の印が消されているのは事故の前…ミサトがアイロンをかけていた時に思い出したんだろうな。 俺はたとえ休日でも、第五日曜日は絶対に出勤していたってことに。 だからアイロンも放りっぱなしで家を出た。 でも俺は今日、有給休暇をとっていて会社にはいない。 そんな事情、ミサトは知らなかったんだろう。 急いで会社に向かう途中、事故にあった… 「…ミサト、だったのか」 全てが繋がった気がした。 ミサトだったんだ。 俺は震える手で、ポケットから携帯を取り出し、電話をかけた。 相手は、ハルナが弁当を持ってきたと言った、あの同僚だ。
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