最終編

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「もしもし?」 「あ、もしもし。ユウヤ、大丈夫なのか今電話して?奥さん…死んだって…」 同僚は戸惑うような声音で聞いてきた。 「あぁ…なんとか大丈夫」 何が大丈夫なんだろう。 自分で返事をしながら自問自答する。 俺は携帯を握り直し、話を切り出した。 「あのさ、一つ聞きたいことが、あってさ…」 言葉を紡ぐ毎に、心臓が悲鳴をあげる。 「なんだ?」 意を決した。 俺は息を吸い込み、一気に捲し立てた。 「ほら、良く会社に弁当届いてただろ?あれって…本当にミサトの妹が届けてたのか?」 応答がなかった。 携帯越しに互いの呼吸音だけが響く。 いくらか時間が経った後、同僚が息を吸い込む音が聞こえた。 「あれは、奥さんからだよ。妹さんは関係ない」 やっぱり… 俺の想像が現実になった瞬間だった。 「最初に弁当渡された時、奥さんに頼まれたんだよ。こんなこと恥ずかしいから主人には言わないで…って」 「あぁ」 「で、妹とユウヤが仲良いから…とかで妹からにしといてくれって言われて。お前が出勤してる時、毎日届けに来るから愛されてるなーって思ってたよ」 「そっか…」 「葬式とか日程決まったら知らせてくれ。行くからさ」 「あぁ、ありがとう」
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