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まばらに降る小さな雪。
下でも雪にきづいたらしい、生徒が騒いでいるのが聞こえる。
鼻先に雪がついて、すぐに溶けた。
「千葉さん、寒いから中に---」
扉のドアノブに手をかけながら千葉さんを見る。
僕は、そこで止まってしまった。
「綺麗……」
千葉さんは、両手をお盆のようにして、雪を手のひらの中におさめていた。
なんだ、そういう顔が出来るのか。
千葉さんは、口を緩め、目を細め。
僕のなんかよりもずっと、もっとずっと自然に笑っていた。
「…………」
いつまでそのまま止まっていただろう。いや、止まっていたかったんだと思う。
僕はこの瞬間が永遠に続けばとさえ思っていた。
「くちゅんっ」
千葉さんの可愛らしいくしゃみで僕は正気に戻る。千葉さんはススンと鼻をすすっている。
僕はマフラーをとって、千葉さんのうしろから近づき、マフラーを丁寧にまく。
「高橋?」
「風邪、ひいちゃうから」
風邪をひくのは、というかひいてるのは僕じゃないか、と思うほど僕は体中が熱かった。うまく言い表せない。ギューンでボワッて。
「そうか」
これが、恋なのか。この千葉さんの笑顔を独り占めしたいとか、千葉さんと一緒にいたいとか。
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