1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「わかった、いってらっしゃい」
吉野さんは千葉さんに返事をした。
「三船、借りる。
高橋、ちょっと来て」
千葉さんは僕が何かを言う前に腕をつかまれた。
「ちょっとどいて」
千葉さんが教室の扉の人ごみに言うと、またモーゼが海をわったときみたいに道が出来た。
そこを千葉さんと僕は、というか千葉さんは僕を引っ張って走っていった。
「あれっ、高橋と千葉、そんな絡みあったっけ?」
「ううん、全然。
中学も違うし、クラス文系と理系で違うからなんとなく噂で知ってる感じ?」
「だよな、千葉ってあんま男子と話さないし」
「まあ冷奈の性格的にあんまり考えらんないじゃん、男子とはなす冷奈」
「…たしかに。
それで、あの千葉は高橋連れてどこに向かったんだ?」
「さあ? 中庭かもしれないし、ピロティかもだし、屋上かもしれないけど、とにかく人があまりいない場所」
「まあ…今日は中庭もピロティも誰もいなさそうだけど、なんで?」
「わからない?」
「ああ、全くわからん」
「考えたらわかるわよ、氷コンビの片方がもう片方に差をつけてるんだもの」
「…?」
「頑張って、冷奈」
最初のコメントを投稿しよう!