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「ねえ高橋。
高橋は、上手に笑いたい?
」
しばらく続いた沈黙を千葉さんが破った。
「別にどっちでもいいかも。三船君とか、友達もいるし」
「うん。私も奈美も花ちゃんもいる」
でも、と呟く千葉さん。その声は少し悲しげに聞こえた。
「もし、私に好きな人が出来たら…」
割り込むのは良くない気がするから、手をこすって温める。
「高橋はさ、笑わない彼女なんて欲しい? 表情のわかりづらい、喜んでるか、悲しんでいるのかもわからない彼女を持ったら嬉しい?」
こんな悲観的なセリフ、でも千葉さんはやっぱり無表情でいる。
「無表情の僕がいうのも何だけど、少し嫌だ」
「…………」
「こんな少しの時間しか話してないけど、なんとなく千葉さんの性格はわかった。優しくて、他人に絶対に悪い思いをさせたくない、極端に不器用な性格。
君はもし一緒に料理を食べていて、彼氏に勧められたら、嫌いでも食べるんじゃない?」
千葉さんはコクン、と頷く。
「彼氏は善意から君に勧めたけど、千葉さんはそれが苦手で悪い思いをさせた。君が無理をしたから、結局はどっちも傷ついてしまう」
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