少女軟禁

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 なんだこれは、と不思議に思う。明るい世界を想像しただけで胸焼けがしてきた。熱いものが喉元まで込み上げる。  胸を押さえながら部屋の入口へと向かい、ドアノブを回す。  てっきり鍵が掛かっているものだと思ったが、ドアノブは抵抗することなく回った。  そのまま押してみると扉は開き、眼前に陽に照らされた廊下が現れる。  軟禁されていると思ったのに、実はそんなことなかった。いつだって外は、わたしを出迎える準備をしていてくれた。  恐る恐る、部屋の外へと足を踏みだす……踏みだ……だし、たい? ……わたしは外に出たい? どうして? 外に一体、なにがある? 不快感を覚えたばかりの光景でも探しに行くのか?  片足を不自然に浮かせたまま悩む。悩む脳とは裏腹に、身体は外に出ることを拒んでいた。  足がゆっくりと部屋に戻ろうとする。逃げようとする。逃げる。 「……」  足下の盆に、ゆっくりと嘔吐した。喉に残る刺激がいやに懐かしい。そして、これで何度目かになる記憶の復活を遂げた。  現実逃避もここまで極めれば、立派な特技へと昇華する。誰からも軽蔑されること必至な特技へと。  口の中に残る不快感もそのままに、ベットに倒れる。その際に顎を打ったが、痛みより眠気のほうが意識をより支配する。閉じた瞼の隙間に入り込んでくる照明も、今は全く気にならなかった。 「あー、眠い」  だから眠る。外に出ることをまた諦めて。  こうしてわたしは、今日も自己を軟禁し続ける。 〈了〉
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