少女軟禁

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 ここはどこだろう、と辺りを見渡す。わたしは誰なんだろう、と寝転がったまま自分の身体をぺたぺた触る。  寝起きのせいか頭は上手く回らず、一連の行為にどのような意味があるのかは分からない。わたしは誰なんだろう、なんて考えているわりに、自身の正体には一切の興味が湧かなかった。  自分の正体なんかより、ここがどこなのかというほうが、ずっと重要だった。見た感じ女の子の部屋っぽい。ただ、物はあまりないようだ。こざっぱりとしている。  女の子の部屋っぽいとは言っても、ぬいぐるみと明るい色の壁紙を見て、なんとなくそう感じただけだ。  部屋は薄暗い。カーテンの隙間から洩れる陽が、この部屋唯一の光源のようだ。その少ない情報から、今が夜ではないことを知る。  起き上がる。身体の所々が軋むように痛み、とくに頭痛が酷かった。頭の中で合唱祭でも開かれているかのように、蔓延的に痛みが続く。  この痛みの理由はなんとなく知っていた。ただの寝過ぎだ。わたしは寝過ぎると決まって、目を覚ました際に頭痛に襲われる。……のか? うん、きっと襲われるはずだ。 「あーあーあー」とわたしも合唱祭に参加して、より痛みを悪化させた。馬鹿じゃねえの、とセルフ突っ込み。  あらためて部屋を見渡す。広さは八畳くらいだろうか。わたしが眠っていたベットは部屋の隅っこにある。ベットの横には炬燵机があり、上に本やゲームが並んでいた。それを見て、『これはわたしのだ』と勝手に判断する。  んー、と伸びをし、部屋の入り口あたりに向かう。扉の近くにスイッチがあったので押してみると、照明が灯り部屋が照らされた。眩しさに反射的に目を細めるが、明るさにはすぐに慣れた。
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