鈴木太郎

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豊臣准教授は、手に入れた鈴木太郎の小中高、それと二十代、三十代、四十代の写真を暫く見比べるように眺めていた。 そして「なんて、ありふれた名前なんだろう。そしてなんて、ありふれ特徴なんだろう。」そこら辺を探せば、こんな中年男、良く似た人間なんぞ、いくらでもいるだろうと、一般人ならそう思うだろう  実際、豊臣准教授が初めて、鈴木太郎を見た時の感想はそうだった。しかし、鈴木太郎の家族や小中高の思い出や彼と十二年間も同じ学校に通った友達の話を聞けば聞く程、鈴木太郎と言う人間の存在の大きさに驚いた。  そして、鈴木太郎の同僚や行き付けのスナックのママの話。極め付きは、風俗関係者の話は、特に豊臣准教授を驚かせたし、とても俄かに信じ難話ばかりだった。  「鈴木太郎。本人と話してみたいがぁ。しかし、冷静でいられるか?同じ人間で同じ男なのに、嫉妬するかもしれない。いや、嫉妬すると思う。絶対に・・・」  と思うと同時に豊臣准教授は、鈴木太郎の故郷・秋田の空を眺めながら、鈴木太郎の歩んで来た人生を想像しながら、歩けば、立ち止まり、そして大きな溜息が出しては歩きを繰り返しながら、秋田駅へ向かった。
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