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「夢だけど夢じゃなかった」
いや、夢じゃないんだけどね。何言ってんだ俺は。
アラームの音に目を覚まし、辺りを見回すと二人の姿。その姿に安堵して、俺は朝食を作ることにした。
「大和」
「あ、家康。・・・起こしちゃった?」
「あぁ・・・」
キッチンでの物音が煩かったのか、家康が起きてきた。少し眠たそうに目を擦る彼は、権現っていうか年相応だ。
「いい匂いがしたからな」
「期待にそぐわなくて悪いけど、ただのハムエッグだよ」
苦笑する家康に苦笑を返す。つかハムエッグって言ってもわかんないか。
「後は味噌汁と白米。でおk!」
普段はそんな手の込んだことしないけど、二人とも育ち盛りだもんな、きっと。料理の腕に自信がある訳じゃないけど、そこはしっかりしないと。
「すまないな、大和。迷惑を掛ける」
「いいよ。俺も楽しませてもらってるからね」
ハムエッグを皿に移す。やべ、若干焦げてる。
「・・・代償も無しに、世話になりすぎている」
「別に、まだ一晩だしさ。そんなに重く考えなくても」
「だが」
あ、シリアスモードか。・・・やりずらいしはぐらかすかな。
「じゃあ身体で払う?」
「え」
「それが一番早いんじゃないか」
背を向けているので家康の表情は解らないけど、・・・反応が悪い。もしかしてひかれてる?
「・・・三成ならともかく、ワシでは駄目だろう」
え?
思っていた反応と余りに違っていたため、慌てて振り返る。
「家康?」
「なんだ、大和」
「・・・冗談、だぞ?」
振り返った先にいた家康の顔が少し赤かったので、慌てて取り繕う。
「冗談、なのか?」
「え・・・うん。・・・なんかゴメン」
「そうか・・・。いや、ならいいんだ」
まずい、空気が悪い。変なこと言わなきゃよかった。
沈黙が重い中、リズムの悪い包丁の音だけが響いていた。
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