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トゥルル...トゥルルル...
何かが鳴った、今の今まであったかなかったかさえ微妙だった電話機だ。今じゃ携帯電話なんて便利なものがあるから、滅多に鳴らないよねぇ。
「大和、何の音だ?」
「電話だよ、ちょっと待ってね」
今日は家康とハンバーグを作ってたんだけど。邪魔をされてムッとしつつ、肉をこねていた手を洗って受話器をとる。
「はい、木代です」
[あ、大和君?]
受話器越しに聴こえる声は、なんとなくか細い女の人の声。俺はこの声を知っている。
「お義母さん?どうしましたか、いきなり」
[えぇ、いきなりごめんなさいね。・・・大和君、少しこちらに帰ってこれないかしら]
「・・・何があったんですか?」
連絡してくるなんて珍しい・・・何だか嫌な予感がする。
[お父さんが倒れてね。・・・もう長くないかもしれないの]
「・・・そう、ですか」
お義母さんの言葉はそこで途絶えた、俺はスケジュール帳を開く・・・一応一度帰らなきゃなと思い予定を確認した訳だが、予定以上に大変なことを忘れていた。
「木代、何と話している」
「三成!大和の邪魔をしてはいけないぞ!!」
・・・この二人である。っべー、っべーなー!!二人をここに置いてく訳には行かないから・・・仕方ない、連れていくしかないかな。
「・・・お義母さん、予定はどうにかなりそうなので、明日にでも帰ります」
[本当?なら良かったわ・・・!]
電話越しの声が明るくなる、その声に安堵しつつ・・・俺は、空気読めない略してKYな発言をぶつける。
「ただし、なんですけど・・・その、友人を二人連れていってもいいですか・・・?」
あぁ、恥ずかしい。
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