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熱い。
目を開けていられない程の熱気と煙が、僕を覆っていた。
つい数時間前に袖を通したばかりの、僕よりも少し大きなスーツが動き辛い。
ジャケットは脱ぎ捨てた。
僕は高校生なのだから制服でもいいと思ったのだが、こんな時の為に、と母さんがパートで貯めたお金を叩いて買ってくれたものだった。
僕にはもう、そんなものは必要無くなってしまったのだけれど。
なんとかして原型を留めている廊下も、一面の火の海の所為で何処もかしこも同じ場所にしか見えなかった。
曖昧な記憶と勘を頼りに、大ホールまで向かう。
彼女が居るのなら、間違いなくそこだと思ったから。
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