彼女の大嫌いなコンサートホール

3/12
前へ
/80ページ
次へ
火と煙に弄ばれ、視界は涙でぐしゃぐしゃだった。 僕の精神は磨耗しきっていて、感覚がおかしくなっていく事を、ただ冷静に受け止めていた。 いや、違うのか? 僕はこれまでに無いくらい動揺していて、頭の中では無意識に彼女の事しか考えてないのかもしれない。 そう思うと、すとん、と胸のつっかえが落ちたような気がした。 やっぱり、僕は彼女の事しか考えられないのか。 そのクセ彼女を理解したつもりになって、挙句の果てには彼女を傷つけて。 最低だ、僕は。 そして僕は、彼女を救おうとして偽善者ぶるのか。 ヒーロー気取りで彼女の前にノコノコと顔を出そうと言うのか。 ――違う。 ――僕は。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加