1人が本棚に入れています
本棚に追加
ピアノの音が聞こえた。
飛び跳ねるような、それでいて地に落ちるような、心の底からの音が響く。
彼女は、楽譜は無いと言った。
彼女が作った曲だと、教えてくれた。
曲名は“焔”。
放課後の音楽室で、彼女が僕を呼ぶ時に弾いた曲。
僕の名前が焔というわけではないけれど。
足を進めていると、次第にピアノの音が大きくなってきた。
早く、急がなければ。
じきに消防隊がやって来て、僕と彼女を引き離してしまうから。
目の前には、大きな扉。
すぐ上の壁には、大ホールと書かれたプレートが掛かっていた。
着いた。
扉を開けようと伸ばした手を、寸でのところで引っ込める。
把手は金属製なのだ。
僕は少し考えてから、肩で押し開ける事にした。
最初のコメントを投稿しよう!