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僕はステージによじ登って、彼女の背後に立つ。
僕の聴いた事のない曲。
「僕は」
「初めてね」
僕が言葉を探そうとしていると、彼女の声が僕の意識を奪い去る。
「私の曲を聴かせたのが君で、私の曲を褒めてくれたのが君なの」
彼女はピアノを弾く手を止めて、でも決して僕の方を見る事無く続けた。
「私をただの女の子として見てくれたのも、君が初めてだったなぁ」
違う。
僕が無知だっただけだ。
きっと彼女が有名なピアニストだと知っていたら、僕は彼女とは線を引いて接していた筈だ。
「凄く嬉しかったの」
普段なら嬉しい言葉が、僕の胸をえぐった。
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