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「まさか君から会いに来てくれるなんて、想像もつかなかった」
彼女は僕を知っているらしい。
先ほどもそんな事を言っていた。
「えっと、この辺、夜は獣とか出るので、早く帰った方が良いですよ」
何を喋るべきなのか分からずに、そんな脈絡も当たり障りも無い事を言ってしまう。
「ふふっ、それは恐ろしいな。そしたらその時は、君が私を守ってくれ」
少しだけ僕を馬鹿にしたように笑い、彼女は僕に手を伸ばした。
「もっとこっちに来てくれないかな、少年。私は君と話がしたいんだ」
かつてない緊急事態を前に、有って無いような僕の思考はただ彼女に流される事を選んだ。
「そんなに恐がらないでくれ。言っただろう、私は君と話がしたいんだよ」
彼女はドレスを翻して僕に近寄ると、その柔かな手で僕の手を握り締めた。
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