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ふぅ、と彼女は息を吐いて、月の浮かぶ夜空を見上げた。
そして僕をちらりと見ると、また哀しげに笑って月を見た。
「君は素敵だよ。誇らしい、立派な物を持っているんだね」
僕も体を転がして、夜空を見上げる。
「私には、そんな物はないんだよ。薄っぺらい、汚ない物だけだ」
そんな事はない。
言葉が口を突く事は無かった。
「そんな私が、毎日毎日、部屋の窓から見る君は、凄く煌びやかに見えたんだ。私にとっての太陽だよ、君は」
君を知って、私は初めて光を知った。
こんな私が、君の月でも良いんだろうか。
彼女は嗤った。
「貴女は」
僕の心が言葉を紡ぐ。
「貴女は、僕には無い物を持っています。僕から見た貴女は、凄く、光っています」
でも僕は、今見ている彼女しか知らない。
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