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少年はたった一人で何もすることがなく、世界に対しても自分に対しても退屈でたまらなかった。
少年には自分の人生を変えるだけの力はまだ無かった。
そして彼には思い出も希望も何も無かった。
この世界で大切なものが何一つ無かった。
少年はスポーツ神経がずば抜けて良いのに運動部にも入っておらず、教室でも誰ともしゃべらず、本を読んでいた。
現実がとても辛くて、現実が面白く無かった。
楽しい事なんぞ何一つ無いいままでの人生のせいで心がすさんでいた。
そんな少年の名前を緋鉈 良治
と周りの人は呼んだ。
それが少年の名前だった。
そして良治という名前の少年はこれから自分の人生が大きく変わること知らずにいつもと変わらず楽しくない、退屈な日常生活を送っていた。
そして良治という名前の少年が住んでいる街の中の北側にある丘の上にひっそりと立っている骨董品屋。
そこにはひとつの黄金色の懐中時計があった。
その中には一人の少女が文字通り封印されていて、その封印は10年間施されたままだった。
そしてその封印された懐中時計を持っている少女がいた。
「今日もきませんか。これで10年目ですか。早いですね」
その少女はそういいながら骨董品屋の店の奥のほうへ消えていった。
だが、10年前に止まった歯車は近いうちにまた動き出すことを、このとき誰も知らなかった。
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