甘い毒リンゴはお好き?

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本日は晴天。 午前六時に ゴーン ゴーン… と鐘が鳴る。 この世界の中心地にあるお城の上には、色とりどりの光の球が舞い上がる。 その遠く、小さな街の朝の市場はいつものように賑わっていた。 「ゆずゆちゃん、いい魚があるよー、寄ってかないかい?」 「今日は遠慮しときますーっ」 「あらまあ、ゆずゆちゃん、今日も相変わらず可愛いわねえ」 「それはどうも、ありがとうーっ」 はあ、はあ、 と、息をあげて、短い会話を何とかかわしつつ、朝の市場を駆け抜ける。 そのための、飾り気のないペタンコ靴に黒のくたくたワンピース。 「オシャレ」なんて、この街のみんなにとっては無意味な言葉。 この街の人たちの楽しそうな笑い声や、カラフルに彩られた市場の活気が、たまらなく好き。
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