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甘くてみずみずしい香りが身体の中に、
トクン…トクン…
と、染み込んでくる。
わたしはリンゴが好き。
「食べる」のではなくて、「香り」が。
「いいなー、いいなぁ。これ、どこで仕入れたの?」
「そりゃあお前さん、こんないいリンゴ、魔法界の中心地にあるに決まってんじゃないか」
いやあ、ほんとにいいリンゴだ、といいながら、おじさんは私からそれをひょいっと取り上げてしまった。
ああ、つかの間の幸せがぁ…
「さあて ゆずゆ、
今日こそは買ってくれるんだろうなあ…って、おいっ」
ふっふっふ。
そう来ると思って、一足お先に店の外まで出ておいた。
「うちが世界一のビンボーだって知ってるでしょう?
」
ニコッと笑って、おじさんに手を振った。
そうだよ、早く帰らなくっちゃ。
どうしても、確かめたいことがあるんだ。
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