甘い毒リンゴはお好き?

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本当なら、今日配達の白い封筒の中には、この小さな街の、唯一の魔法学校への合格通知が入っているはずだった。 だけど、それは合格者だけに届くのであって、届いていない私は不合格者ということになる。 うーん、何がいけなかったんだろう。 いつもドジでおてんばだからかなあ。 それとも、あの果物屋さん。 いつも買っていかない私に果物たちが、「この香りドロボーめっ」とか何とか言って、 私が不合格になるような魔法をかけちゃったのかも知れない。 ぐるぐると、くだらないことまで考えてしまうけど、結局は、ショックが増してくるだけだった。 ため息を何度もつきながら、私は家の扉をあける。 生まれた時からずっと一人で生きてきた私は、家に入ったところで、 「おかえりなさい、どうしたの?落ち込んじゃって、何かあったの?」 なんて言ってくれる人などいない。 あーあ、こんなことなら今日一日中、あの果物屋でリンゴを見つめ続けていればよかったかなあ。 なんて思いながら、玄関に足を踏み入れた途端、その声は聞こえた。 「お帰りなさいませ。おや、どうかなさいましたか、落ち込まれて、何かあったのですか?」 「え…」
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