守りたかったもの

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「さて、いそぐかー」 月「少し待っててください。車をまわしてきます。」 「はいよー」 月村は駐車場の方に歩いて行った。俺は家の前に立って待つ。 ポケットの中から携帯を出して、花宮に [今から行く] という文だけのメールを送る。 日向からのメールは来ていない。ついでに日向への明日のことについてのメールを作る。 [明日は花宮の方にうまくまわってやって] と。 あいつ1人でもちゃんとやれると思うけど、変なことに首つっこむし。 そうこうしている間に黒い車がきた。俺はそれの後ろのドアを開け、乗り込む。 「レッツゴー」 月「はいはい」 月村は俺を軽くあしらってアクセルを踏んだ。 俺は車の窓を開ける。 実家は今の家と場所が近い。ほんとはあのまま実家でもよかったんだけど... 極力、彩南の家に近い方がよかったから、月村と今の家に住むことにした。彩南とは一緒のマンションに住んでいる。俺は3階で彩南は2階。 母さんや父さんとはたまに会う。でも会うたびに言われるのは、いい加減に彼女を見せろって言葉。 そして花宮の家は車で30分くらいのところにある。花宮が俺の家に来る時は歩きらしく、結構かかるんだと文句を言っていた。 バスや電車は金がかかるし、自転車が疲れるとかなんとか。 「歩く方が疲れると思うけどなー」 月「なんですか?」 「んいやー」 月村は首をかしげたがあまり気にしていない。前を向いて運転を開始した。 俺は風をあびながら外の風景を見る。日曜日だからなのか親子連れが多い。 俺は家族との思い出というものがあまりない。あるのはじいちゃんと月村と過ごしていた日々のこと。 世間で言う金持ちの家に俺は生まれた。だけど、俺はそのあとを継ぐ気はさらさらない。それを父さんはあまり気にしていないようだった。 両親はお偉い会社の社長だ。そのことで俺は小、中と特別扱いされたりする事が多くあった。 俺はそれが嫌で高校に入って月村と2人で暮らし始めたのだ。 月「ほら、着きましたよ。」
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