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薄暗い森の中、重たい瞼をうっすらと開けた。
透き通る新鮮な空気を肺の中いっぱいに押し込め、深く吐き出す。
白い息。かなり寒い。
「寒……火消えてる」
毛布に包まり焚き火の前で暖をとっていた。焚き火は、消えていた。寒いわけだ。 下手をすれば凍死だ。
俺は毛布を肩に掛けたまま起き上がり、夕べ集めて置いた薪を同じ場所に集めた。
寒い。寒い。本当に寒い。
薪を置き、人差し指を向けた。ほんのりと指先が赤い焔を宿すと、でこぴんの要領で小さな火を飛ばした。
すぐな薪の側に顔を近付け、火種に息を吹き掛けた。火種は燻らせものの数秒で薪は着火した。暖かい。
腰を地面に下ろして、しばし寛ぐ。
「異常だ、本当に」
踊る焚き火を見つめ思わず囁いた。
「この森で魔物が襲って来ないなんて……」
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