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「愚かな男。お前は生きたいか?」 いつの間にか、俺の手足からは縄が外れ、身体が浮かび上がっていた。寒さは感じない。 そして、雪女と対峙していたのだ。 「そうだな……」 俺は力無くそう答えた。 俺は彼女を愛していた。だから、利用されている事に薄々感付いていながらも、彼女の口車に乗り、強盗を働いたのだ。 彼女とその金で高飛びして、見知らぬ土地で静かに暮らしたい。俺の願いはそれだけだった。 その想いは、裏切られた事を知り、彼女を呪っているこの状況ですら、変わらないでいた。 「ふん、やはり愚かな男だ」 雪女はそう言うと、再び俺を雪の上に横たえた。 途端に、その冷たさが身体に染み込んでくる。しかし、その感覚もすぐに消え去った。 変わらず白い吹雪が世界を支配している。 そんな中、魂の抜け殻になった男の遺骸だけが白い世界に黒い染みを作っていた。 だがそれも、すぐに新しい雪が包み隠したのだった。 ばたん! 突然、山小屋の扉が開くと、白い雪と冷たい空気が、山小屋の中を席巻する。 「やだ、寒ーい!」 女がそう言うと、 「掛け金が緩んでたのかな?」 男がそう言いながら、扉に向かっていった。
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