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「こんな酷い現場、見た事ねぇよ」 山狩りを始めた警察は、金持ちの所有する山小屋に到着していた。 その中は余りに凄惨で、そこから出て来た警察の人間は、身体を折り曲げて胃の内容物を逆流させている。煌めく雪の結晶は、至る所で黄色や茶色い凹みを作っていた。 「何があったと思います?」 漸く胃が落ち着いたのか、若い人間の一人が口を拭いながらやって来た。 「爆弾で吹っ飛んだ……と言いたいが、あの肉片にも内側の壁にも焼けた跡がない。それに壁に張り付いていた肉片は、爆風で吹き飛ばされたような方向性はないしな。全く訳が分からねぇよ」 山小屋の中には、都合人間二人分の肉片が、まるでミンチにでもされて壁に投げつけられたかのように、至る所に張り付いていた。 何もかもが綺麗に砕かれている為、最初は何の肉が分からなかった。鑑識が入って漸く、それが人間のものだと分かったのだ。 それらがぐずぐずと、壁を流れて床に落ちていく。 外の真っ白な世界と対照的な、真っ赤な地獄。 「何があったか知らねぇが、この肉片の主が、あの強盗殺人の犯人じゃねぇかな。後はDNA鑑定待ちだ。あの老夫婦殺害の現場に残されてたDNAと一致すりゃあ確定だろうよ。しっかし、ここにはいたくねぇな……。後は鑑識に任せて、一先ず撤収するか」 人間のいなくなった世界を、慟哭のような風が吹き荒ぶ。それは雪を舞い上げ、世界を美しく彩った。 その後は、煌めきに惑う空気と、耳鳴りのする程の静寂。 太陽が雪片に反射する中を、何かの影が過ぎったように見えるのも、目眩にも似た光に惑わされただけなのだろう。 また、風が哭いた。
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