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少し遠くで聞こえたチャイムの音を駆け足で辿る。
もう習慣になってしまった遅刻だけど、それで出席日数が足りないとかになったらシャレにならない。
「くそっ、面倒臭いな」
遠くでゆっくりと校門が閉まり出す。
その横で男性教師が竹刀を握っていた。
「オラァ、柊ぃ!! 早くしないと遅刻だぞ!」
「ちょっ! 待って、待ってくださいって!」
教師が竹刀を大きく振り上げて地面にたたき付ける。
竹刀が折れるんじゃないかと思うほどの音が耳に届く。
それに鞭を打たれたように更に足の動きを速めて……。
「ゴオォォォォルゥゥゥゥゥ!!」
「おぉぉぉし、良くやった! それでこそオレの自慢の生徒だ!!」
雄叫びを上げて両膝をついたオレに教師が抱き着いてきた。
……暑苦しい。
「先生、汗くさいっす」
「朝起きて真っ先にジョギングしなきゃならんからな」
先生にしか聞こえない声で伝えると、先生もまたオレにしか聞こえない声で答えた。
「さっ、早く行かないとHRに間に合わないぞ」
熱血ハグから解放されたかと思うと思いっ切り背中を叩かれる。
「いっ! 先生、今のは痛かった!」
押された勢いのまま、走り出す。
後ろから「ハハハッ!」という爽やかな高笑いが聞こえた。
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